石榴

石榴

「霧風はこのこと知ってんの」
麗羅が物憂げな声で聞いた。
「このことって?」
「ぼくとこーいう関係だってこと」
寝返りを打った麗羅の体から、甘い汗の香りが漂う。

「…なんでそこに霧風が出てくるの」
「だって、付き合ってんでしょ」
「別に」
「あれ、違うの」
小龍はその問いには答えずに衣服を身に着け始めた。

「こないだ喧嘩してたじゃん」
「…あそこに居たの、やっぱお前か」
小龍が手で半分顔を覆う。あの時、気配を感じた場所にはもう誰も居なかったのだ。
あそこまで見事に気配を消せる相手といえばこの里にも数人しかいない。
「霧風ってあんな大きな声出すんだね。知らなかった」
「俺だって知らなかったよ」

「『貴方、誰かを好きになったことなんてないんでしょう』って、凄い捨て台詞だったねえ」
「…どっから聞いていたんだ」
「小次郎とあまりしゃべるなってあたりから」
「全部じゃねえか」

「優しくしてあげればいいのに」
麗羅が後ろから巻きつくように抱きついた。
「してるよ」
「どうだか」
一度止めたシャツのボタンがゆったりと外される。

「今夜は泊まっていきなよ」
「今日は帰る。最初からそう言っておいたろ」

「…『貴方、誰かを好きになったことなんてないんでしょう』」
「やめろって」
声色をまねると、小龍が腕の中で身をよじった。
「仕方ないよねえ? ぼくたちみたいな人間はさ」
耳元でささやくと、小龍がぽつんとつぶやいた。
「…そうだな」

「どっか壊れているんだよな、俺たちって」

俺たちという共犯めいた響きにうっとりと麗羅が目を閉じる。


「ね、やっぱり今夜は泊まっていきなよ」

 


庭でがさりと何かの実が落ちる音がした。
 



 (20060201 麗羅強化月間 影羽部屋バージョン)



 

 

 


やっちゃったぞー攻め麗羅なのですよー
でもリバ風味で。


石榴…赤い種子を持つ果実が特徴の石榴は秋の季語。ペルシャ原産。日本には平安末期から鎌倉時代に中国から渡来したといわれている。ヨーロッパでは果物として食べるほかお酒(カクテル)の材料などに使用されるが、日本では花木として改良され、梅雨の頃に赤い花が開く。聖書ではソロモン王の花。開いた実から、性的な暗示を持つこともある。実が多いことから、子沢山、豊作の象徴。


花言葉は、「優美」(木)「互いに思う」(花)「成熟した美しさ」(実)「結合」
     「円熟した優雅さ」「おろかしさ」

 共犯めいた二人の、関係。 詳細設定はこちら。下の方に裏設定あります。
 
(20060214)


2006/02/14(Tue) 11:58