白炎 13

白虎の出てこない白虎×紫炎シリーズ(ミッション・きらめき☆バレンタイン編開始)



 妖水先生の小悪魔教室 13 妖水・至福のバレンタインデー・・・スゥイートな贈り物偏




「うわ、なんかすごい!」
叫んだのは紫炎である。
「お、今年はトリュフか」
「とりゅふ!とりゅふって、アレでしょ?豚さんが捜すキノコ!」
「まあ、それと同じで丸い形にしたチョコだ。生チョコ使ってんな・・・ほれ、分けてやるから、食ってみろ」
「いいの?いいの?」
「壬生にも分けてやるよ。これが本命チョコってやつだ」
「く・・・!」
とか言いつつも、壬生も興味があるので素直に妖水の彼女が送ってきた手作りチョコレートをありがたくいただくことにする。

「うあ、美味しい」
紫炎が声を上げる。
「なめらかですね」
「おーい、マスター、いるんだろ?珈琲頼むぜ。マスターの分もチョコレートおいていってやるからよ」
「ウホッ、また生意気なことを」
どこにいたのか、某宇宙人似の喫茶店「船長」のマスターが青年たちの後ろから現れる。
音もなく、トリュフチョコレートがひとつ姿を消した。

「あれだろ?壬生ってモテるけどさ、本命つくってねえから、こーゆーの、ないだろ」
「わ、わたしですか? わたしは別に、モテませんよ」
「妖水、壬生っちは硬派なんだよ~」
「フッ。硬派上等だがな、この世は女にモテてなんぼだぞ」

黙殺する壬生。

「なんだよ。それともあげたい方?」
「ぶ!そ、そんなわけないでしょう!」
「あれ~?俺の情報だと、壬生っちは、現在赴任中の白鳳学園に、なんだかお気に入りの子がいるそうじゃねえか」
「な、なななんですかその胡散臭い情報は!」
「え、そうなの?壬生っち?!」
「嘘です冗談ですガセです!妖水、言うに事欠いて貴方という人は!」
「そのうろたえぶり、あやしいな。ちょっとマジで調べるか」
「調べて調べて~」
「紫炎まで!」

「さて。で、チョコレートはどうするんだ紫炎」
「わ、こっち向いた!」
「当たり前だろうが!この際壬生が熟女教師とどうにかなろうと関係はない!俺が気になるのは貴様の方だ!」
「なんですかその熟女教師というのはっ!」
壬生が突っ込みを入れるが、確かに見れば見るほど紫炎の手つきはおぼつかないもので、なにやら茶色くうごめく妖しげなチョコレートのような塊は、所在なさげに台所に飛び散っている。

「うああああん、どうせぶきっちょなんだようううう」
「まったくだな。ここまで下手だとは」
「どうせどうせ~!妖水の彼女さんみたく美味しいのなんて作れないよう~」
とうとうボールを手放して台所に紫炎が突っ伏した。

「しょうがねえ。美味しいのが作れないなら、裏の手を使うか。」
「う、裏の手?妖水、貴方、何をたくらんでいるのですか」
「いや、美味しくなくてもよ、どうしても手作りしたいなら、アイデア勝負だろ?」
「アイデア?」
「そうそう。たとえば面白い形に固めるとか、チョコペンでメッセージ書くとかさ」
「ああ、なるほど」壬生がぽんと手を叩く。
そうだ。よくある言い回しではあるが、愛がこもっていれば味などは二の次である。
ちょびっと妖水を見直した壬生が、何かを言おうとした時である。妖水がごく明るい声で続けた。

「紫炎のアソコの型を取ってさ。それでチョコ作ってやれば絶対喜ぶぜ」


   紫炎が妖水の前髪を燃やしたことは、まあ仕方ないだろうと壬生は今でも思っている。



(さあ20070204 バレンタインまであと10日!)




2007/02/04(Sun) 17:42