白炎 11

白虎の出てこない白虎×紫炎シリーズ(シリーズらしいよ!)


 妖水先生の小悪魔教室 11 (ミッション・どきどきペンダント編 後編)





「うへへへへ~」
喫茶店「船長」の扉を開く緋色の影。

「うわ。頭に春が来ているやつが躍りながらやってきた」
「来ましたね」

 夜叉一族指定喫茶店「船長」は、某宇宙船風のオブジェが並ぶアーバンスタイルのカフェである。

 小さくスキップをしながら入ってきたのは夜叉一族唯一の炎遣い・紫炎である。今日は髪を上で束ねて、ポニーテール風にしている。

「あ~、攻ちゃんも妖水もここにいた~♪」

「うげ。俺も妖ちゃんと呼ばれるかと思った」
「上機嫌ですね、紫炎」
「うん~♪ 聞いて聞いて~」
紫炎が自分の指定席に座る。彼はこの店だとたいてい同じ席に座るのだ。

「こいつが幸せになると何か話を聞きたくなくなるのは何故だ」
「妖水、それが人間というものです」
「うむ」

 先に喫茶店で座っていたのは壬生攻介と八忍の一人・妖水。性格はかなり違う二人であるが、妙にウマが合う。

「あれ、首飾りですか」
壬生が気がついて紫炎の首から下がっている飾りを指摘した。紫炎の首には、奇妙な色合いの彫刻のようなものが施された石のような飾りがついたネックレス…のようなものが巻かれていた。とにかく、奇妙な首飾りである。

「微妙なセンスだな。どっか田舎の寂れた温泉街の売れ残ったお土産か?」

「馬鹿あああああああああああああああああああつ」

「うわ、なんだよ」
「驚きました」
「バカバカばかばかー!! 微妙なセンスとか言わないの!とうとう!とうとう貰ったんだよ!白虎にプレゼントとかしてもらったの!大事なの!」
「ということは、先日のミッションペンダントが、成功したってわけですか?!」
「壬生!ミッションネームはドキドキペンダントだ!間違えるな!」
「どっちだっていいでしょう!で、どうなったんですか?」
「俺はそのネックレスのセンスの無さの方が気になるがな」
「センスないって言うなあ!」

 正直を言えば、壬生が見てもそれほど似合うとは思えなかったのだが、まあここは争うところではないのでペンダントのデザイン性についてはコメントを控えておく。

「あいつ、草津とかに出張だったっけ」
「妖水!寂れた温泉街って発想から離れてよ!」
「紫炎、草津は別に寂れていませんよ」
「うあああん!もういいよ!言わないから!妖水なんて知らないんだからーっ!」
「よしよしどうどう。落ち着けって。まあ、よかったじゃねえか。一歩前進だな」
「てへ」
「おお、一瞬で復活しやがった」
「そうですかー。あの白虎がネックレスをね~」
「ねねね、すごいでしょ、いいでしょ、がんばったでしょ~」
「よしよし」
壬生が紫炎の頭を撫でると、不気味に妖水がほほえんだ。

「フッフフフフフフ・・・」

「うわ、またなんだか余計にやる気が満ちている人がここにいる」
「ふあーはっはっはっははははははは!大人の階段上っている途中だが、更に上のステージを目指そうとは思わないのか紫炎!」
「なんだか最近の貴方は宗教がかってきていますよ」
「なんとでも言えいっ!さ~て、お前ら、そろそろ季節はいつだかわかっているか?」
「ふえ?季節?」
「季節と申しますと?」

「ぶぁっかもおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんっ!」

「うを!危ない!」
「危ないよ妖水!ペンダント壊れたらどうすんのっ!」
「壊れたらしょーがねえ。俺がその妖しげな民芸調の首飾りのフェイク作ってやるから安心しろ」
「民芸調とか言うなーっ!」


「まあまあ。季節は冬・・・ですが?」
「甘いな壬生!甘いと言えばチョコレート!チョコレートと言えばバレンタインデー!」
「!」
「な・・・なにぃ!!」

「フッ・・・お前ら、まさか知らねえとは言わせねぇぞ。聖バレンタインデー・・・ここでひとつ、奴を捕らえる大きな罠を仕掛ける!」
「わ、罠!」
「おう。捕獲目標日時は更に一ヶ月後の三月一四日!」
「なんですかそれは」
「ばっかやろおおおおおおおおおおおおおおおおうううっ!ホワイトデーだホワイトデー!まさに真っ白な白虎の日!ここで白虎には白いものを吐き出して貰うのだ!」
「妖水!今のよくわかんなかったけど、シモネタだよねっ?」
「紫炎、聞き流していきなさい」

「ふははははははははっ!行くぞミッション名きらめき☆バレンタインだーっ!」
「うん!頑張るっ!」

 変なペンダントをぶら下げながら、いつかきっと来る甘い春に向かって誓う紫炎なのであった。

(20061129 いい肉の日。up:20070121)

 

 

変なペンダントはベルセルクのあの赤いアレをイメージしております。

2007/01/21(Sun) 17:17