白炎 07

白虎の出てこない白虎×紫炎シリーズ (まだ続くよ!)


 妖水先生の小悪魔教室 7



「①、不能である。②、性欲が少ない。③、紫炎に魅力がない」
指を立てながら妖水が数え上げる。
「そこからですか」壬生が突っ込む。珈琲はすでに二杯目だ。

 しつこいようだが、妖水が挙げているのは、白虎が付き合っている筈の紫炎になかなか手を出さない理由である。



 春先から付き合うようになったという二人なのだが、充分大人の筈なのに、なんといまだに手つなぎデートだけなのだという。紫炎の訴えにより、今日も喫茶店「船長」(夜叉一族指定喫茶店)にて、作戦会議及び相談会が開催されていた。


「といいますか、付き合うってどういうことなんでしょうね」
「ぶ、壬生よ、なんだその基礎基本の確認みたいなセリフは」

 ちなみに会合は今日で数回目を数える。

「んで、少しは進展したのか?お前ら」
「なんで妖水がそこで喜々として突っ込むのかが私にはわからないんですが」
「週末の出張、俺白虎と一緒だったから、こいつに替わってやったんだよ」
「おや」
「俺ってキューピッド?みたいな?」

 てんで性悪キューピッドである。

「一緒に行ったんですか」
 壬生が声を掛けると、パフェを前にした紫炎が肩をすくめた。
 本日のパフェは彼の髪と同じような甘い色をしている。
「・・・出張、譲ってもらったんだけど・・・」
「おい、なんだよ、歯切れが悪ぃな」
「・・・だって妖水!お、お前、ホテルの部屋一室だったじゃないかーっ!」
「お前ら付き合ってんだろ?別々のシングルの方が変じゃねえか」
 平然として妖水が答える。
「わ、進展ですか?」壬生も身を乗り出す。

「わーんっ、聞いてよ攻介ぇっ!妖水ったら、妖水ったら、部屋にベッドがひとつしかないホテルの部屋を予約していたんだよーっ」
「なんでそこで文句言われなくちゃいけねえんだよ」
妖水が口をとがらす。
「ベッドひとつだったら、やるこたひとつだろ」
「ばかばかばかばか~っ」
「へいへい。それでどうなったワケだよ紫炎ちゃん」
「任務が終わって、宿に帰って・・・それで・・・」
「・・・それで?」壬生も緊張がうつってきて思わず小声になる。
「フロントの人に変な目で見られたよう!」
「ばーか。それはお前の自意識過剰ってやつだよ。で、どうなったんだよ」
「フロントの人が、『ダブルのお部屋でよろしいんですよね?ツインのお部屋も空いておりますが』って白虎に聞くから」
「ああ、そりゃちょっと恥ずかしいな。あとでホテルの方には苦情のメール入れておいてやる」
それはフロントの人もかわいそうである。普通は正しいご案内だろう。
「そ、それで、どうなったんですか?紫炎」
「・・・白虎、『そうですね、間違いです』って言って、空いているツインの部屋に換えちゃったんだよう~」
「!」
「ぶぶ!」

「な、なんだよそれ!」
「うわああああああん」

「うわー、なんてゆーか、アレだな」
「アレですね」
「もういい。お前、あいつとは別れて、いっそ俺と付き合え」
「いやだよ!そんなの!」
「うを、速攻拒否かよ!」
「当然だろーっ!妖水の馬鹿ーっ」

「さーて、冗談はさておき、どっから手をつけるべきか」
「冗談の質が悪いよ!妖水の馬鹿馬鹿馬鹿―っ」
「・・・でも、紫炎は、もう少し、その、接近したいんですよね」

 こくんとうなずく紫炎。
壬生から見ても、紫炎はかわいいなあと思うのだけど。

「しまったな、ミッションコードネーム・『任務終了、ダブルでポン!』計画は失敗だったか・・・」
「なんだよそれ!変な計画名つけないでよ!妖水、楽しんでいるんでしょ!」
「楽しまないでこんなアホな相談に付き合ってられるかっちゅーの。んで、今回もチューまでは行かなかったのかよ、お前ら」
「・・・」
押し黙る紫炎。
あれ?と壬生が首をかしげる。
「・・・もしかして?」
「う、ううん!してないしてない!なんにもしてない!チューとか、全然されてないっ!」

「・・・されたな」
「されましたね」

 紫炎がすべてを白状させられるのは、その30分後のことであった。




 (20061128)
 をを?とうとうこの二人も手つなぎからキッスまで進展か・・・?
 まて次号!部屋についてはこちらでも(笑)そうだよワタシはダブルとツインの区別が最近までついていなかった子ですよ!






2006/11/28(Tue) 19:12