白虎の出てこない白虎×紫炎シリーズ(え?シリーズ?)
妖水先生の小悪魔教室 2
「①、不能である。②、性欲が少ない。③、紫炎に魅力がない」
指を立てながら妖水が数え上げる。
白虎が付き合っている筈の紫炎になかなか手を出さない理由である。
「だってよ、一緒に食事食べるくらいなら、俺と壬生だってしてるわけだし」
妖水が言うと、壬生攻介があからさまにイヤーな顔をした。
「妖水、貴様気色悪いことを言うな」
「まあまあ攻ちゃん」
「こーちゃんとか呼ぶな。気持ち悪い」
「ほれほれ、本題に戻すぞ?白虎の野郎は何でお前に手を出さないんだと思う?①から③の他にこれだと思うものがあれば挙げてみろ」
「妖水、貴様・・・」壬生がため息をつく。
「もっとも①から③までの複合体もありえるわけなのだが」
「・・・③」
小さな声で紫炎が応える。
「ぶぁっかもーぉん!」
妖水が机をひっくり返しそうな勢いで立ち上がった。
とはいえここも夜叉一族指定休憩所・喫茶店「船長」。スタートレックの船長に似たマスターはかつての夜叉一族の副総帥であり、このくらいでは取り乱すこともない。キセル煙草をくゆらせながら、お気に入りのカップを静かに磨いている。
「なんでそこで自分に魅力がないと答える!自分にもっと自信を持て!!」
「あのー、妖水?」
帰るタイミングを逸して同席している壬生攻介がこっそり突っ込むが、妖水は更に追い打ちを掛ける。
「考えてもみろ!お前の方が若いし綺麗で可愛いし、特殊系だし、家柄もいいわ稼ぎもあるわ、あの変態片目白虎にお前を振り回す権限はない!!」
「わ、若いのは確かに年下だけど、可愛くは・・・ないと・・・思うし」
「ええい!このM属性め!」
「・・・妖水ってSだったんですね」壬生がつぶやく。
まあ、金属製のワッパを振り回すMってのもあまり見ないなあと、心のどこかで納得しながら壬生が腕を組む。
「なんで白虎ごときに遠慮するのだ!振り回せ!かき回せ!こづき回せ!!目指せ小悪魔系!」
「こ・・・小悪魔!」
「そうだ紫炎、ちょっとやってみろ!演習問題だ!・・・その1、やつが待ち合わせに遅れた。どうする!」
「え・・・え~と、『大丈夫、気にしないよ!(ニコッ)』・・・かな?」
「違う!!!なんでお前が待たされなくてはいけないのだ!まず怒れ!(ぷんすか)だ!」
「(ぷんすか)って・・・!お、怒れないよう!そんなんで嫌われたらどうするんだよ!」
「馬鹿もの!駆け引きだ!小悪魔を目指すのだろう!『・・・心配しちゃったゾ!罰として、帰りに・・・キス、して?』くらい言えぬのか!」
「ぶっ!」吹き出す壬生。
「いっ・・・言えないようそんなこと!」
紫炎はもう真っ赤である。
「最初から言えとは言わない!練習修行があるのみだ!」
「・・・でも、それなら帰りにキスとかして・・・くれるかな」
「ヤツは義理堅いからな。約束とゆー言葉には弱い筈だ」
「妖水・・・貴方そういう攻め方をするタイプだったんですか」
白虎の弱点を見越して動くとは、流石は夜叉八将軍の一人に名を連ねるだけはある。
「フッ、俺はSだからな。うじうじしているヤツを見るといじめたくなるのだ。攻め込める場所はもれなく突っ込む!」
「・・・」
攻撃は最大の防御である。
「演習問題その2!遊びに行った先で、終電が無くなった。どうする!」
「え・・・えと、『忍者なので、走って帰ります』!」
「違―う!!!なんで走って帰らなくてはいけないのだ!チャンスだろうが!ラブホテルに連れ込め!」
「ラ、ラブホッ・・・ええええええええっ!つ、連れ込めないよう!そ、そんなんで嫌われたらどうするんだよ!」
「馬鹿もの!テクニックだ!小悪魔をめざすのだろう!『なんか・・・疲れちゃった。ちょっと休める場所、・・・あるカナ?』くらい言えぬのか!ちなみに小首をかしげて上目遣いだ!右上45度!!」
「うはっ!」のけぞる壬生。
「で・・・出来ないようそんなこと!」
紫炎はもうぷるぷるしている。
「・・・でも、それなら帰りにホテルとか行って・・・くれるかな」
「ヤツは義理堅いからな。電車を逃したのは貴様のせいなんだゾ☆というところを全面に出すのがコツだ!」
「妖水・・・貴方、いつもそんなことをしているのですか」
「フッ、終電なくなっちゃった攻撃はいわば定石。壬生、お前だってやったことくらいあるだろう」
「・・・」壬生がノーコメントを貫いたのは正解である。
「いくぞ、演習問題その3!」
「ちょ、ちょっと待って!メモするから!」
紫炎の小悪魔計画、はてさてどうなることやら。
すいません。続きますよ。
(20061103 文化の日)
☆船長さんのステキ挿絵追加w・・・20061217
小悪魔紫炎たん、ありがとうなのですよ!!!
2006/11/03(Fri) 16:18