青鷺
「壬生さんって、年上?」
洗濯物をたたんでいた小龍が手を止めて兄に聞いてみる。
「ミブサンって誰」
「兄貴が付き合ってる人。ほら、髪の長い、ちょっと奇麗な」
「ああ、名前ピンとこなかった。うん、いくつか上」
「…頼むから名前も知らないまま付き合うようなマネ、あんますんなよ」
「セックスだけの付き合いだから名前必要ねえもん」
兄に捕まった相手は大変だと思う。小龍はため息をついた。
「こないだ仕事先で会った。真面目そうな人じゃんか」
「へえ、お前に会ったなんて話、俺きいてねーぞ」
「言いたくなかったんじゃないの」
携帯を取り出し、なにごとかメールを打ち始めた兄を見ながら、小龍が眉根を寄せる。
兄は、自分が独占されることは極端に嫌うくせに、自分が気に入っている人間が他人と接触するのを嫌う傾向がある。身勝手きわまりないのだが、それが兄なのだからしょうがない。
「本気じゃないなら付き合うのなんかやめなよ」
弟が優しい声を出す。
「感じのいい人だし、兄貴が中途半端な気持ちで付き合うっていうなら、迷惑をかけるよ」
ああ、あいつもしかして、と項羽はメールを打っていた指をふと止める。
あいつ、ちょっと小龍に似ているんだ。
どっか生真面目に、自分のことを深い目の色でじっと見る姿が、ずっと誰かに似ているとなんとなく思っていたのだった。
「…ニヤニヤすんなよ、いやらしい」
小龍が兄をこづく。
項羽は答えずにっこりと弟にほほえみかける。
この時点ではいわゆるセフレですね。…セフレ?
セフレなんて単語をあたし使うようになるとは…フッ。
個人的には洗濯物をたたんでいる小龍が気に入ってます。
(20060414) セックスのときは名前呼んだ方がいいと思うよ、項羽!(笑)
(up:20060527)
2006/05/27(Sat) 06:40