檸檬
「あまり、あられもない声を出さない方がいいと思う」
小龍が口を開いた。
「うわ」
小次郎が赤面した。
「ゴメンゴメン、うるさかった?夕べの事だろ?」
「なんだ、気づいてたんだ」
「小龍とは何度か目が合ったじゃん」
小次郎がぺろっと赤い舌を出す。
「お前の事だから、夢中で気がついていないのかと思ったよ」
「夢中だったのは竜魔。途中でお前らに気づいたらやめちゃうんじゃないかって思ってさー、俺あれでもけっこう頑張っていたんだぜ」
「頑張っていたのは認める」
小龍がにっこりと笑いながら、小次郎のほっぺたを力任せにつねりあげた。
「任務中でなければな」
「痛でででで」
「ゴメンってばよー、でも竜魔がようやくその気になってくれたのに逃す手はなかったんだよー」
「隣の部屋で見張りしている俺たちの身にもなれ!」
「霧風もいたの?」
「うろたえてた」
「うあ、悪いことしちゃったな」
「当然だ。馬鹿者」
「うあああーん・・・って、痛でででっで・・・っ・・・だって-」
「…しょうがねえな、一つ教えておいてやろうか」
「なに?」
小次郎が赤くなった頬をさすりながら顔を上げる。
最近小龍はまた背が伸びた。
「声はな、あんなに最初から飛ばさずに、なるべく我慢して唇を噛んで、押し殺すふりする顔を見せてやったほうがいい」
「ふんふん、それで」
「それで、相手をノセてから、あえぎ声を耳元に吹き込んで聞かせてやればいいんだよ」
「ふえぇー、小龍そんなコトしてんの?」
「いや、羽根一族秘伝のひとつ」
「いいなー」
小次郎が感心しきった声を出す。
「小龍ってうまそうだよね」
「うまいよ」
「そのうち一回くらいやろうよ。色々教えてほしい」
「いいけど」
小龍が手元に置いた羽根をもてあそびながら答えた。
「…いいけど、それをリョーマに使われるのは、イマイチ気にくわないな」
もう一度にっこりと笑うと、小龍は再び小次郎のほっぺたをつねり上げた。
(20050705)
初めての「裏作品書いた!」という一本がコレでした。エヘ。
2006/05/21(Sun) 00:20