風太の風の里日記 その1
里にインターネットが入ったのは比較的最近のことである。
しかし、これからの時代は忍者も情報化を薦めねばならず、若手を中心に、ネットブームが巻き起こっていた。
この場合、機械が得意なものと、うといものではっきり分かれるのが面白い。以下は、ある男のインターネットとの愛と涙の格闘物語である。
「・・・なんじゃ、こりゃ」
項羽がパソコンの画面を覗き込んで、抜けた声を出した。
開発センターの共用PCで九州の忍仲間へメールを送ったついでに、履歴を確認した項羽は、不審な履歴を発見したのだった。
「共用PCでエロサイトみたら、履歴消しておけよなー、馬鹿がいるなー・・・」
つぶやきながらも興味を覚えて、そのままここ数日の履歴を確認する。
「うわ、なんだこりゃ」
もともとセンターの共用PCを使用する者は少ない。
誰でも使えるようにという配慮で置かれた共用PCであるが、本当に使いこなす若い衆はだいたい自宅にPCを持っているし、主な用件は携帯でも充分である。本来使って欲しい大人たちはあまりセンターに来てまではPCをいじろうとはしていない。羽根屋敷にも勿論立派なPCがあり、項羽・小龍ともに、仲間内ではかなり使えるほうだった。
もともと理数系に強い傾向がある小龍などは簡単な修理もできるので、他の家に呼ばれてPCの調子を見ることさえある。
「・・・誰だ、こいつ」
項羽が画面を覗き込む。
共用PCを使っていたものはどうも、エロサイト経由で大人のおもちゃまで購入していた履歴が残っていたのだ。
興味を覚えた項羽は、しばらく考えていたが、10分後にはメールアドレスを割り出す事に成功した。
ryouma.dokuganryu@yaho●.co.jp
「ぶはっ!!」
そんな恥ずかしいメアドを取る男など、項羽には心当たりは一人しかいなかった。
「やべえ、面白すぎる!!」
さっそくyaho●のページからログインを行なう。
パスワード確認画面が出るが、項羽は一瞬考えた後にパスワードを入れてみた。
kojirou
竜魔が丸二日間かかった無料メール取得作業は、かくして項羽の手によって、わずか30分でセキュリティを突破されたのだった。
(その2へ続く)
20051101
2006/03/07(Tue) 20:00