虎杖(いたどり)
「殴られたのか」
項羽が心配そうに言って、弟の頬に触れた。
「大丈夫」
「殴られたかどうかを聞いているんで、大丈夫かどうかは聞いていない」
兄が真面目な顔で言うので、小龍が困ったように笑う。
「お前ならあいつに指一本触れさせないこともできるだろう、もう」
「そういうわけにもいかないよ」
兄弟があいつ呼ばわりしているのは彼らの父親である。
気むずかしい父親はたいした理由もなく息子に手を挙げることがあるのだが、その対象は何故か下の弟に集中している。
「あいつ、変だよ」
「そーいうこと、言わない」
「おかしいって。お前見る時の目、最近普通じゃねえもん」
「兄貴」
「あーあ、合宿行くのやめようかな」
「何言ってるんだよ、班の人たちに迷惑かかるんだろーが」
明後日から項羽は柔道の合宿で里を留守にする。
「だって、俺の留守中お前とあいつだけにすんの心配じゃねえか」
「家には他にも人がいるから大丈夫だって」
「合宿は劉鵬も一緒だから頼めねえしな」
「だから大丈夫だって」
「お前の大丈夫はアテにならねえの」
項羽が弟の鼻の頭をつんとつつく。
「俺としちゃ不本意だが、俺のいない間は焔屋敷で飯食わせてもらえ」
焔屋敷の麗羅は柔剣道を選択していないので、合宿とは縁がない。
「不本意って」
「あそこなら親父も変な手出しはできねえだろ」
「それは、そうだけれど」
焔屋敷の麗羅の祖母は八忍の一人に数えられる長老で、羽根の御大であってもそうは意見を言えない数少ない人物なのだ。
「それともいっそさ」
項羽が何か思いついたように言う。
「旅先で落ち合って、どっか逃げちゃおうか」
「どっかって」
「どっかだよ。でもってさ、二人でアパートでも借りて暮らすのってよくないか?」
小龍が困ったように笑う。
項羽は弟のそんな表情が好きで、機嫌良く見つめている。
虎杖(いたどり)…タデ科の多年草。虎の斑点のある杖のような茎をもっていることからこの漢名がついている。和名のイタドリは、薬用植物として、痛みを取る痛取りからいているという説もある。春に出る若芽は山草として珍重された。普通は白い花が咲き、雌雄異株。花の赤いものを紅虎杖、一名を明月草とも呼ぶ。
春の季語。
というわけで2000リクで藤ちあきさんから「羽根兄弟ならなんでもいい」というお言葉を受けて項小です。あまりお祝いっぽくないよこれ(笑)!
お兄ちゃんは心配性ですが、この父親どうにかしないといけねえな。
っていうか、最初この話、合宿じゃなくて修学旅行でした。修学旅行か!どこ行くんだこいつら。京都奈良もいいですが、北海道あたりに修学旅行でも楽しそうですよ。
修学旅行だと同じ学年なので項羽・劉鵬・霧風が一緒。
この学年の修学旅行の話も面白そう~っ。先生も忍者だとは思うんですが、生徒と教員チームとのやりとりが熾烈そうです(笑)
霧風がキーホルダーかなんかお土産に買ってきたらかわいい。
(でも渡せなかったりしてさ。結局小次郎あたりにあげちゃうの)修学旅行妄想!
恋のお守りとか買ってしまいそうになっているんだよ!
ちなみにお留守番小龍をお預かることになる麗羅は大喜びで小龍歓待しそうですよ!
(20060217 up;20060422)
2006/04/22(Sat) 17:34