夜店
浴衣で待ち合わせ、ということでまだ7時でも若干明るいのだが、小龍も項羽と揃いで浴衣姿で外に出た。
「お前も新しい浴衣にすればいいのに」
「丈が少し短くなってきたからなあ」
二人はお揃いの帯に色違いの団扇を背中に差す。
「だろ、俺からあとで言っておいてやるからさ。新しいの買ってもらえよ」
「いいよ別に。年に何度も着るものでもないしさ」
「そんなこと言ってると、また俺のおさがりになるぜ?」
「おさがりって、兄貴これ以上身長伸びると思ってんの」
「言ったな」
待ち合わせ場所に行くと、先に来ていたのは劉鵬だ。
彼はいつも15分前には待ち合わせ場所に到着している。
「よ」
項羽が片手を上げて挨拶をする。
「そっか、俺劉鵬とも約束してたっけ」
「…項羽、お前な」
「まあまあ」
時間の3分前には麗羅も来た。真新しい浴衣は紺地に赤い彼岸花の絵が描かれており、彼にぴったりと似合っていた。
「女物かと思った」
「姉のものを仕立て直したんだよ。いいでしょ」
項羽の指摘に、麗羅が婀娜っぽく目を細める。
「小龍の浴衣、少し丈が短くなってない?今度ばあちゃんに頼んで浴衣作ってもらってあげるよ」
「 こ と わ る 」
「項羽に言ってないし」
麗羅の祖母は先代の八忍の一人で、炎を操るくのいちである。
現在は一線を退いているものの、孫の教育に余念がない。
「んじゃ行きますか~」麗羅が小龍の腕を取る。
「あれ?四人だけなのか?」
劉邦が聞くと、麗羅がこくんとうなずいた。
「うん。竜魔と小次郎は本陣から直接行くっていうし、琳彪たちも屋台手伝ってるし」
「ふむ。あいつの焼くたこ焼きは絶品じゃからのう」
「そうか、てことは兜丸も今頃手伝わされているのか」
「兜丸は太鼓もやらされてる筈だよ」
「それに、霧風はダウンしてっからな」
ほんのりいじわるげに項羽が笑う。
そうなのだ。この暑さで霧風は体調を崩し、霧屋敷で横になっている。
「祭りくらい来ればいいのに」
「お、小龍寂しそうじゃな」
劉鵬が無邪気に言ったが、項羽にすごい目でにらまれる。
「小龍には俺がいればいいの」
「ブラコン」
麗羅が赤い舌を出すと、項羽がすっと構えた。
「お前、ここでやる気か?」
「ちょ、ちょっとやめんか二人とも!これからお祭りに行くっていうのに!」
劉鵬があわてて項羽の肩を押さえる。
「…はん。勝負は預けておいてやる」
「その台詞、覚えておくんだね。返り討ちにしてあげるよ」
麗羅は涼しい顔だ。
客観的に言うと、項羽は正直なところ焔系とあまり相性がよくない。
「さ~、行こうか♪」
麗羅が気を取り直してスキップをしそうな勢いで小龍を引っ張る。
笛と太鼓の音が聞こえてきて、今夜はお祭りだ。
(20060811)
だからどうだといわれればそれまでのお祭り。
でもなんかはかなくて。
夜店って、言葉だけでわくわくしますね。
羽根兄弟に麗羅劉鵬の4人出演でした☆
2006/08/16(Wed) 13:42