卵粥

卵粥

「ほら、口開けて」
項羽が湯気のたった粥を匙に掬う。
「自分で食べられるって」
小龍がくすぐったそうに言うが、項羽はどこか嬉しそうに弟の世話を焼く。
「いいから。まだ熱下がったばかりなんだから俺の言うことをききなさい」

火曜から羽根屋敷の次男坊は体調を崩し、熱を出して寝込んでいる。
学校が終る時刻になると見舞いに級友たちが尋ねてきてにぎやかなことこのうえないのだが、夜になれば弟は兄がたっぷりと独占できる。

「具合は」
「兄貴の葛根湯が効いたみたい。随分楽になった。もう一眠りすれば元気になると思う」

小龍が少し笑う。単なる風邪であったし、基礎体力があるので体調は徐々に上向きになっていた。一昨日あたりは全身だるくて関節も痛むしひどい状態だったのだが、ゆっくり休息が取れたのがよかったらしい。最近休みなく動き回っていたところで風邪菌に捕まってしまったのだろう。

「明日は麗羅が見舞いに来るとか言ってたぜ」
「へえ、麗羅が」
結局おとなしく兄に匙を運んでもらいながら小龍が相槌を打った。
「断っておいたからな。貴様は来るなって」
「なんで」
「だってあいつ来たってお前が早くよくなるわけでもないじゃねえか」
「だからって、断ることないだろうに」
「俺がいやなの」
「そっちが本音か」
小龍が笑う。だいぶ元気になってきた。

「明日から学校に行くよ」
「もう一日休めって。俺が看病してやってんだから」
「兄貴が看病したいだけだろ」
「ふふん」

猫舌の兄が吹いて冷ました卵粥は少しぬるすぎるのだったが、小龍はおとなしく口をつける。
「もう一日休めって」
優しい声で兄が言う。
「今夜はやっぱり布団隣りに敷くから一緒に寝よう」
「兄貴は自分の部屋で寝ろって。うつったらどうすんだよ、風邪」

「そんときはお前が俺の看病をすればいいんだよ」

こんな兄貴を誰かが見たらやはり笑うのだろうか。



 



     

          (20060210 項羽×小龍で。)

 か ゆ 、

 う ま    ・・・とかいうのは冗談ですが。


 弟にベタベタのお兄ちゃんが書きたかっただけなのですよ。
項羽×小龍は和むなあ(笑)
 羽根兄弟医療班。



(up:20060317)



2006/03/17(Fri) 15:58