その日、小次郎が何か思いついたようでやってきて言うには、
「なあなあ、霧風の霧って、色とかつくの?」
「は?」
「ピンクの霧とか出せるのかなーって思ってさ。こないだ小龍とそんな話をしてたんだけど」
「水蒸気だけでは無理ですけれど、含有物によっては可能かもしれませんね」
霧風が真面目な顔で答える。
「へえー。小龍、聞いた?可能かもしれないだってさー」
「ふうん」
小次郎が連れてきた小龍が首をかしげる。
「なんでそんな話になったんですか」
小次郎の発想はなかなか面白いのだが、どこをどうすればそんなことを思いつくのだろうか。
「学芸会のスモーク替わりというのは勘弁してくださいよ」
「それは、御仁の時代に大失敗したって聞いているから」
小龍が笑う。
その昔、学芸会で効果として霧を使おうと思いついた人がいたらしく、まだ学生だった霧風の父親がその役職を担ったのだが、いかんせん狭い講堂でのことだったため、もののみごとに紙でつくった舞台背景やせっかく購入した照明などが1日で駄目になってしまったという事件があったのだ。
「でもいいな、ピンクの霧とかってきれいそうだ」
小龍が穏やかな声で言う。
「…そんなに、見たいですか?」
「ちょっとね。な、小次郎」
「俺はかなり見てみたい」
学校からピンクのチョークが1カートンなくなったのは、その数日後のことであった。
(2005/10/28)
霧小仲間のサリヲちゃんが食いついてくれたネタです。
小次郎と小龍は、某長寿番組・水戸黄門で、女忍者の技を見たらしいです。
かげろうお銀の色仕掛け技のときの、アレです。アレ。
白墨=チョークのこと。
2005/10/28(Fri) 09:46