長葱

長葱

「見舞いに葱というのはどうなんだ」
小龍が布団から体を起こして眉をしかめた。
広間には新鮮な葱の香りが漂っている。

「この匂いの成分が風邪に効くんだよ、みのもんたが言ってたぜ」
「みのもんたかよ」
小次郎が背負ってきたのは本陣の裏庭で取れたばかりの泥葱だ。せめて洗ってから持ってくればいいのだろうが、その辺はまったく持って気がきかない。

「そうだよ。ぼくみたいに、林檎とか、センスのあるものを持ってくればいいのに」
枕元に座る麗羅が手馴れた様子で林檎を剥きながらため息をついてみせたので、とたんに小次郎が口をとがらせる。
「ちぇーっ、なんだよう、せっかく見舞いにきてやったのに、なんで嫌味言われなくっちゃいけないんだよう」
「いや、気持ちは嬉しいけどさ」
「小次郎は気持ちだけでいいんだよ。実際に来ることはない」
麗羅が容赦なくやり込める。
「なんだよー、麗羅までっ」
「せっかく小龍と二人っきりになれると思ったのに、小次郎がのこのこ付いてくるんだもの」
「あ、やなかんじ」
「なんとでも」
麗羅が赤い舌を出す。別に本気で言っているわけではないのだ。小次郎もすぐに笑い出す。

「しかしなあ、あれだよな、小龍が風邪ひくなんて珍しいよな」
「そうだな、熱まで出たのは久しぶりかな」
「最近風邪がはやっている様子だから、気をつけないと」
「はやってる?そうかな?他に誰か風邪ひいてたっけ?」
「なんとかは風邪をひかないっていいますから、小次郎は心配しないでいいんだよ?」
「ぐはっ!なんか今日の麗羅はいやにつっかかるなっ」
「週末に霧風が体調崩したのも同じように熱が出たと聞いているけれど」
「へえー、さっすが麗羅、詳しいな」
「まあね」
麗羅がむいた林檎のひとつを小次郎の口に押し入れて、残りを皿に移す。

「霧風にうつされたんじゃないの?その風邪」
麗羅が上目遣いで小龍をじっと見る。
「…まさか」
小龍が静かに笑うと林檎に爪楊枝を刺した。

「だけどあれだな、鬼の学ランってやつだな!」
明るい声で言う小次郎に、小龍と麗羅が同時に突っ込んだ。

「鬼の霍乱だ!」


 (20060207)


 鬼の学ランが書きたかっただけの話。コネタですな。
 学ランのランって、オランダのランから来ているんだって。(5へえ)


 小学生の頃から風魔で書きたかったんだ、このネタ。
 鬼の学ランってどんなんだよ!ってことで。


長葱ってタイトルはどうなんですかそんな風魔SS。
 なんて、実はそうだね、霧風から風邪をうつされるようなことをしたのかもしれないね。
 
 麗羅は霧風が小龍に風邪うつしたんじゃないかと疑っています。カンがいいから。
 微妙な間が流れるものの、小次郎がぶち壊します。

 霧風は先週金曜日午後から具合悪くなって早退、土日で完治、月曜日から登校。
 小龍発熱は火曜日あたりからで、これは水曜日放課後の話。
 火曜の放課後は雷炎・十蔵がお見舞いに来てくれて、水曜日は麗羅と小次郎。
 学校休んじゃったので、みんなお見舞いに来てくれたんだ。
 もちろん夜は項羽が喜喜として看病するんだよー。
 霧風はお見舞いに出遅れてしまうくちで。

 霧風の風邪は「風邪」「蜜柑」、項羽の看病は「卵粥」、これが「長葱」で風邪ネタだけで4本です。「どうせなら、風邪は汗かくとなおるんだよっていって押し倒して…の王道パターンを是非」とr竜小次の方からリクエストいただいているんですが・・・(後日「寝巻」で!!)
 


 (up:2006 03 25)
 


   ・・・麗羅って毎日見舞いに来そうだな!



2006/03/25(Sat) 18:03